森田カオル 小説・短説
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器の記憶
ホーローのケトルを買いに行った際、いい感じの銅製のタンブラーがあった。
冷酒を飲むぐい呑みも探していたのだが、気に入ったものがなかったので、これに決めた。
容量は200ml。お誂え向きであった。
早速その晩、黒松剣菱を飲み、翌日はモルツを注いで飲んだ。
飲んでいて、思い出したことがあった。
平成に入って間もないころ、軽井沢で行われた大学のゼミ合宿に、OBとして参加した日である。
恩師や後輩とともに、まだ当時木造だった軽井沢駅に程近い喫茶店に入った。
そこで、水出しコーヒーを注文したのだが、その際に供された器が、確か銅のカップだった。
そんなこと、今まで20年余りも忘れていた。否、思い出すことがなかったのである。
店の屋号までは思い出せないのだが、Googleで検索したところ、「
丹念亭
」ではないかと思われた。
見覚えのあるテラス席や、銅のカップの写真が
食べログ
に掲載されていた。
ほんの他愛ないことなのだが、記憶というものの不思議な現象を体験した気がした。
2010/12/12(日)
20:30
席亭雑感
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