最後の審判



               森田カオル



――昔々、美しく成長した我が娘を嫉んで、
殺そうとした妃がいたの。しかし姫はその手
を逃れ、魔界の者の力を借りて生き延びるこ
とができたのよ。
 やがて七人のドワーフ達と助け合って平和
に暮らしていたけど、妃はそれを見つけ出し、
またもや娘を亡き者にしようと、いろいろな
手を使ってきたのよ。
「それで、お姫様はどうなったの?」
――目の見えない王子が身代わりとなり、ま
たもや逃れることのできた姫は、妖魔の力を
借りて、妃に復讐をしたの。
「自分の母親を殺してしまったの?」
――昔の童話なら、地獄のような苦しみを与
えて殺したでしょうね。あるいは、今の童話
のようだったら、寛大な心を持って罪を許し、
平和に暮らしたかも知れないわね。
 でも、姫と妖魔がとった方法は、そんなの
とは違っていたの。
 王子の姿を借りて国に入った妖魔と姫は、
二人の婚礼という触れ込みで、姫の母へ使い
を送ったの。妃は他国へ嫁いだ娘をどうする
こともできないけど、やっぱり気になって、
その国へやってきたの。
 でもそこで待っていたのは、妃と同じ顔を
した城の人々でした。自分が一番美しくない
と気の済まぬ妃は、周りがみな自分と同じな
ので、自分の存在意義を失ってしまったわ。
 慌てて自分の国へ逃げ帰った妃を待ってい
たのは、妃と同じ顔と姿の家来達だったの。
王妃は気が狂い、姿を晦ませてしまったわ。
「まあ、恐ろしい。それで、お姫様は?」
――ほっほっ…。どうしているかしらね~。
 少女と話す老婆の髪は、歳に似合わず豊か
に黒々としていた。その傍らでは、紅蓮の髪
と黒い肌をした女が微笑みを浮かべていた。
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