変身



               森田カオル



 朝のニュースがテレビから流れている。行
方不明の女子高生の事件がトップだった。半
分寝ぼけたまま洗面所に立つと、鏡の中の自
分の頭のあたりが、ちょっと不自然に変形し
ていた。触ってみると、硬く尖った物体が生
えている。眼鏡をかけなおして見てみる。
 角、なのか?
 玄関の呼び鈴が鳴る。近所に住む友人、タ
ケトの声がする。ドアを開けると、珍しく頭
にバンダナを被ったタケトが立っていた。
 彼は私の頭を見るなり、あっ、と小さく叫
び、慌てて玄関に入りドアを閉めた。
「お前もか」
 そういってバンダナをとると、いつもの茶
髪の旋毛のあたりに、まるでモヒカン刈りの
ような赤い突起物が見えた。
「お前、昨夜何食った?」
「牛丼」
「俺は焼き鳥だ。昨夜ナオトと焼き鳥屋で一
杯やったんだけど、今朝メール来て、あいつ
豚の尻尾が生えてたって。あいつは鶏嫌いで
焼きトンばかり食ってたからな」
 どうやら、直前に食べた動物の形質が発現
しているらしい。俺たち四人の仲間は先週、
バイトで新薬の臨床実験のドナーをしたのだ
が、思い当たる原因はそれしかなかった。
 残る一人の仲間、コージに電話をかけた。
彼はタケトのアパートへ向かっていたが、こ
っちに来るという。
 間もなく、これも珍しくサングラスにマス
クをかけたコージが現れたが、何か顔全体が
いつもと違っている。サングラスをとると、
彼は女のような顔になっていた。
 テレビには行方不明の女子高生の顔写真が
映し出された。今、目の前に、その顔にそっ
くりのコージが立っている。
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