続・粗忽の使者



               森田カオル



――おい、松っあん。松っあんよぉ、皆、心
配してたんだぞ。とりあえず、無事なんだな。
よかったよぉ。
 肝潰しちまったよぉ、お前さんの事でっつ
って鎌倉警察から電話がかかってきた時はよ。
またこないだみてぇに向島と間違えて小笠原
の……。あ、悪ぃ悪ぃ、こいつぁ言わねえ約
束だったな。
 話は戻るけど、何だってこんな雪っ降りの
寒い日にこんな所……っつうとこの辺りの人
には悪ぃけど、お前さんの住まいでもねぇ所
でお巡りさんの厄介になんかなってんのさ。
 それよりさあ、あん時お前さん何で姿くら
ましちまったのさ。あれからすぐここへ来た
ってぇのかい。あん時って、ほら、昨夜だよ。
仕事の納会で皆で居酒屋で飲んで外に出た時
だよ。お前さん、二次会に行くって盛り上が
ってたくせに、何か急に駆け出してどっか消
えちまっただろ。ユリちゃんなんか心配で心
配で、カラオケだって一曲も歌ってなかった
んだから。なあ、ユリちゃん。
 何だって。ユリちゃんに頼まれた? ……
頼んでねえってさ。本人が言ってんだから間
違いねぇだろ。皆で雪道を歩ってる時だって
? 俺も一緒に居たけど、本人も言ってると
おり、何も松っあんに頼んでなんかなかった
ぞ。
 そう言やぁ確かあん時、ユリちゃん何か言
ってたなぁ。そうそう、もうそこいらへん雪
で真っ白になってて、それ見て盛り上がって
たんだよな。
だいぶつもってきたら遊びたいわね、わた
し、かまくらが好きなの」
 ……松っあん、どうしたんだよ。何で泣い
てんだよ。わけを言えよ。ほら、泣いてちゃ
わかんねぇよ。
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